はじめに

いつかフェリーに乗って、ゆったりとした非日常を味わう船旅をしてみたい──そんな思いを胸に、今回ついにその船旅を実行することにしました。
初めてのフェリー旅行は、仙台〜苫小牧を結ぶ太平洋フェリー「きたかみ」での0泊3日の船旅。夜に乗船し、翌朝に到着するこの旅程は、まさに“移動そのものが旅”という贅沢な時間でした。
「きたかみ」の第一印象は、落ち着いた雰囲気の中にも、どこか煌びやかさを感じさせる優雅な空間。派手さはないものの、丁寧に設計された内装や静かな空気が、旅の始まりにふさわしい品のある印象を与えてくれました。
ちなみに「きたかみ」は、東日本大震災の際に津波の被害を受けながらも、緊急支援の車両や物資運搬で復興支援にも貢献した船でもあります。その歴史を知ると、乗船体験にも深みが増します。
(NEWS – 仙台放送「10mの大津波と対峙 その瞬間が写真に 太平洋フェリーの“あの日”乗組員の証言」)
本記事では、そんな「きたかみ」の船内の様子を、写真とともに詳しくご紹介します。静かな船旅を味わいたい方の参考になれば幸いです。

あまりに船旅を満喫しすぎて、気づけば写真が屋外デッキに偏っていました…。それだけ非日常を満喫できたという、“癒しの証拠写真”と解釈してもらえれば幸いです。

足りない写真は公式サイトから引用させてもらいましょ。

近いうちに、リベンジ乗船して写真を撮ってきます!
落ち着いた空間で過ごす『きたかみ』の船内

はじめに、「きたかみ」の船内の様子をご紹介します。
フェリーターミナルからタラップを渡って船内に入ると、そこには船とは思えないほど洗練された、まるでホテルのような空間が広がっていました。
中央階段や展望通路(プロムナード)では、プロジェクションマッピングによる宇宙空間のような演出が施されており、幻想的な雰囲気に包まれます。

船内には、自動販売機やコインランドリーはもちろん、大浴場にレストラン「グリーンプラネット」、ショップコーナーも完備。さらに、船外デッキにはペットが自由に過ごせる「ペットテラス」も設けられています。

お子さま向けには、キッズエリアが用意されており、家族連れでも安心して過ごせる配慮が感じられます。

なお、「いしかり」や「きそ」のようなシアター、カラオケ、ゲームコーナーといった娯楽設備は「きたかみ」にはありません。
その分、静かで落ち着いた空間の中で、ゆったりと優雅な船旅を満喫できるのが「きたかみ」ならではの魅力です。
一人旅にも快適|『きたかみ』の客室タイプと特徴
今回の船旅では「きたかみ」にしかない客室”エコノミーシングル”を利用しました。この客室は、「いしかり」や「きそ」にある”S寝台”に相当するグレードですが、設備や空間に違いがあります。
また、エコノミーシングルには”女性専用”と”バリアフリー対応”の客室も用意されており、安心して利用できる配慮が感じられます。
(※ その他の客室については公式サイトをご参照ください。)

設備は以下の通りです。
・シリンダーキー(施錠可能)
・寝具(まくら、布団:薄め)
・鏡
・簡易テーブル
・コンセント
・テレビ(BSデジタル放送受信)
・ハンガー(1本)
・タオル掛け(固定式)

エコノミーシングルとS寝台は同じくらいのグレードだけど、エコノミーシングル居室の空間が広く、ちょっと高めなんだよね。

でも、居室の空間が広くて、鍵付きで安心して過ごせるなら、その分の快適さを考えれば納得の価格かも!
エコノミーシングルは、下の写真のように客室が並んでいます。この空間に”トイレはない”ため、船内の共用トイレを利用する必要があります。

S寝台よりも快適で安心なエコノミーシングルですが、利用して感じた注意ポイントがいくつかありました。
利用して感じた注意ポイント
- トイレなどに伴う「扉の開閉」「施錠・開錠」時の音問題
- 扉を開ける時の「ガラガラ~」、閉める時の「バタンッ」、施錠・過剰時の「ガチャン」という音が、就寝時間帯を中心に気になりました。
- 他の利用客の「いびき」問題
- 向かい側の客室から、怪獣もビックリするような豪快な”いびき”が聞こえてきました。扉の遮音性は期待できず、音が漏れやすい構造のようです。(隣の部屋の音はそれほど気になりませんでしたが、”いびき部屋”の隣の方はどうだったのか…少し気になるところです。)

利用して感じた負のポイントは、どれも”音”に関するものでした。
”扉や鍵の音”については、お互いに気をつけたいね。

”いびき”は、本人にもどうしようないものよねぇ?

そうだねー。
”いびき”については、耳栓などで自己防衛するしかなさそうだね。
✿ 耳栓のすすめ
私は持っていくのを忘れてしまいましたが、念のために耳栓の持参をオススメします。
こちらは、私が普段から愛用している耳栓です。長時間付けても耳が痛くならず、遮音効果もバツグンでオススメですよ!
静かな雰囲気で味わう『きたかみ』の食事
「きたかみ」には、レストラン「グリーンプラネット」があり、ビュッフェスタイルのモーニングとディナーを楽しめます。
(※ 運航時間の関係で、ランチ営業はありません)

席数は十分にあり、私が乗船した際はゆったりと座れる余裕がありました。食事中は窓からの景色も楽しめるため、静かな船旅のひとときにぴったりです。

食事の料金(2025年9月時点)は、モーニングが1,200円(小人:800円 乳幼児:無料)、ディナーが2,300円(小人:1200円 乳幼児:無料)。高すぎず安すぎず、ちょうど良い価格帯です。
特にディナーでは、名古屋・仙台・苫小牧の名物料理が並び、旅気分をさらに盛り上げてくれます。
空腹は船酔いの原因にもなるため、食べ過ぎに注意しつつ、適量をしっかり摂ることをおすすめします。

私はディナー・モーニングとも利用し、帰りの「きたかみ」でも再びディナーを堪能しました。
毎食“おかわり”してしまいましたが、幸い船酔いはなし!
1日目のディナー
(※ 写真はあくまで私のチョイスであり、ビュッフェの料理の全てではありません。)


メニューは、「ザンギ(タルタルソース)」「ローストビーフ」「スペアリブ」「鰹のたたき」「麻婆焼きそば」「枝豆豆腐」「名古屋の麺(名前忘れたー)」「ポテト」「ごはん」「みそ汁」
メインメニューにがっついて、サラダバーの存在に気づかずスルーしてしまったよ。

なんか、全体的に茶色だなーとは思った(笑)
あのさ、ひとつ気になったんだけど…。
鰹の下にあるのって、”麻婆焼きそば”の麺じゃない?

そのとおり!
麻婆豆腐の器に麺を入れてから、麻婆豆腐をかけるのが正解でしたー。
2日目のモーニング
(※ 写真はあくまで私のチョイスであり、ビュッフェの料理の全てではありません。)


モーニングではしっかりサラダをGET!
メニューは、「焼きカレイ」「朝カレー」「ウィンナー」「ポテト」「だし巻き卵」「納豆」「のり」「漬け物たち」「ごはん」「みそ汁」

「焼きカレイ」と「朝カレー」…。意図的に並べたわね(笑)

/////…鋭いっ!
2日目のディナー
(※ 写真はあくまで私のチョイスであり、ビュッフェの料理の全てではありません。)


2日目のディナーは、1日目と違う料理があるわね。
”うっしー”のチョイスの問題??

いや、乗ってきた「きたかみ」で帰ったから、ディナーの内容は一緒なのかなと思って確認したら、しっかりと違う料理も並んでいたよ。

それは嬉しい対応ね!
0泊3日のフェリー旅行で、メニューに変化があると楽しみも増えるものね。

そうだね!
2日目のディナーは、「甘辛チキン系」「ローストビーフ」「ポークソテー」「枝豆豆腐」「名古屋の麺(名前忘れたー)」「鮭の味噌焼き風」「ポテト」「お麩の卵とじ」「仙台長なす」「サラダ」「ごはん」「みそ汁」
※ 鰹のたたきもありましたがスルーしました。
レストランの営業終了後は、語らいの場として開放され、静かな時間を過ごすのにも最適です。
障害者割引とバリアフリー設備|『きたかみ』の配慮
太平洋フェリーでは「障害者手帳の割引制度」があり、「きたかみ」の船内も、障害のある方が快適に船旅を楽しめるよう、さまざまなバリアフリーや配慮が施されています。
ここでは、「きたかみ」船内のバリアフリー設備に焦点をあててご紹介します。
障害者割引の詳細については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
「きたかみ」の船内には、廊下やトイレをはじめ多くの場所に手すりが設置されており、エレベーターも完備されています。


船って天候によって揺れることもあるから、あちこちに手すりがあると安心できるわね!
多目的化粧室
船内には、シャワー付きの多目的化粧室が設置されており、大浴場の利用が難しい車いすユーザーでも安心して乗船できます。


トイレの手すりの位置は、片麻痺の方でも麻痺側に関係なく、乗り移りがしやすい環境になっているわね。
シャワーエリアには、手すりのほか、シャワーチェアも完備されており、介助が必要な方にも配慮された設計です。


シャワーチェアが2種類あると、身体状況や介助方法に応じた使い分けができ、とてもよい配慮だね。
理学療法士の視点から見ても、これは非常に柔軟性の高い、ユーザーに優しい設計と言えます!!
屋外デッキの出入口(スロープ)
屋外デッキの出入口には、車いすでもスムーズに出入りできるよう、スロープが設置されています。
海風を感じながら過ごす時間も、誰にとっても心地よいものになるよう工夫されています。


実は、スロープのない船外デッキの出入口はそれなりの段差があります。
高齢者や段差が苦手な障害をお持ちの方は、乗船した時にスロープ付きの出入口を確認してみてくださいね。
読書・海を眺める時間|『きたかみ』での静かな過ごし方
展望通路「プロムナード」
「きたかみ」には、レストラン「グリーンプラネット」の横に、宇宙をイメージしたプロジェクションマッピングで彩られた展望通路「プロムナード」があります。
(※フェリーやクルーズ船では、客室やレストランの外側にある、海を眺めながら歩けるスペースを「プロムナード」と呼びます)

この「プロムナード」は幻想的な空間が広がり、読書や会話を楽しむのにぴったりの場所です。
奥にはマッサージ器も設置されており、くつろぎのひとときを過ごすことができます。
屋外デッキからの眺望

屋外デッキに出ると、まず目を引くのが「きたかみ」のファンネル(煙突)。
太平洋フェリーの頭文字“TF”が刻まれた大きなシンボルマークが、頼もしい存在感を放っています。

仙台港は名古屋港・苫小牧港よりも狭く、後進ができない「きたかみ」は出港前に方向転換を行います。
実はこの方向転換、小さな船がロープで引っ張って行うのですが、この光景は仙台港から出発する時しか見られない“隠れスポット”的な存在です。

方向転換の後、小さな船は「きたかみ」と並走しながら、旅の船出を見送ってくれます。
この瞬間は、まるで映画のワンシーンのような感動がありました。

夜が明け、デッキから遠くを眺めると、そこには水平線だけが広がる大海原。
日々の悩みや忙しさを忘れさせてくれる、フェリー旅行ならではの“非日常”と“解放感”を味わえる瞬間です。

そして、気が付けば「苫小牧港」へ入港。物足りなさすら感じた、15時間の船旅でした。
展望大浴場

「きたかみ」には、海を眺めながら入浴できる展望大浴場があります。
入港30分前まで利用可能で、ジャグジーによるリラクセーション効果もあり、心も体もゆったりと癒されます。

静かな時間に身を委ねながら過ごす船旅は、まさに“移動そのものが癒し”。
「きたかみ」で過ごした15時間は、心に残る贅沢なひとときでした。
まとめ
「きたかみ」で過ごした船旅は、静けさと癒しに満ちた時間でした。
派手な娯楽こそありませんが、丁寧に設計された空間と、ゆったりと流れる時間が、日常の喧騒を忘れさせてくれます。
一人旅で静かに過ごしたい方、読書や海を眺める時間を大切にしたい方、そしてバリアフリー設備を重視したい方には、「きたかみ」はとても相性の良いフェリーだと思います。
なお、同じ太平洋フェリーでも「きそ」はシアターやラウンジショー、カラオケなどの娯楽設備が充実しており、家族や友人とワイワイ楽しむ船旅にぴったり。
次回は「きそ」の船内レポートもご紹介予定ですので、旅のスタイルに合わせて選んでみてくださいね。

0泊3日という一見短い船旅でしたが、心に残る風景と静かな時間は、今もふとした瞬間に思い出されます。
“移動そのものが癒し” ── そんな贅沢な体験を、みなさんもぜひ味わってみてください。

私も味わってみたいから、次に行くときは誘ってよね!

そうだね。
”ゆー”と行くなら、娯楽設備が充実している「きそ」の方がいいかな?

いい意味に捉えておくわっ!
最後までお読みいただきありがとうございました。写真や体験談が、あなたの船旅の参考になれば嬉しいです。
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