【理学療法士の将来性】PTの平均年収と生涯収入

雑記
  • 理学療法士を目指したいけど給料ってどのくらいなの?
  • 理学療法士の給料って低いの?高いの?
  • 理学療法士の将来性は?

こんな疑問をもったことはありませんか?理学療法士は「やりがいのある仕事」とよく言われますが、やりがいだけでは豊かな生活はできません。また、SNS上では「こんなに頑張ってるのに給料があがらない!」等の給与に対する不満の声が多く見受けられます。

今回は、理学療法士として15年以上働いてきた私が、「理学療法士の給料と将来性」について現実から目をそらさずに紹介したいと思います。

記事を読む前に

この記事は、理学療法士である私が「資格取得に要するコスト」と「給料水準」について、客観的なデータをもとにした意見を一部記載しています。理学療法士そのものを否定するものではありませんが、現実を見たくない方や給料の話を不快に感じる方は観覧を控える事をおすすめします。

はじめに

私は理学療法士として15年以上になります。これだけ働いていると「給料が低い」「仕事の成果が正しく評価がされていない」「この人が役職についているのは納得がいかない」など、さまざまな不満を抱く事もありました。

そんな私が20代の頃、所属長や先輩方は「理学療法士は給料ではなく”やりがい”で選んだのでしょ?」「昔はもっと大変だったのよ」とよく口にしていたのを覚えています。確かに、そのようなマインドで理学療法士として働いている人はとても素晴らしいと思います。

しかし、コロナウィルス騒動で超過労働・給与への不満から”東京の某大学病院の職員400名以上が退職を希望する”というニュースがありました。

皆さんも働いていて感じた事があるのではないですか?”やりがい”だけでは生活していけないということを。しかも、”やりがい”とは他人に矯正されるものではなく、自分が実感する事で成立する感情です。

厳しい結論になりますが、理学療法士は金銭的・時間的に余裕のある生活を送れる人はほとんどいないのが現実です。この生活を”やりがい”という理由で相殺できる自信がない人は、別の選択肢を考えるのもありだと思います。

とは言ったものの、生活水準は人それぞれなので、実際に給料・生涯収入がどれくらいなのか、資格取得のコストから見ていきましょう。

理学療法士の資格取得に要するコスト

理学療法士として働くには国家資格の取得が必要となります。国家資格を取得するまでには以下の課程を通過する必要があります。

  • 大学もしくは専門学校へ入学する
  • 座学・実習で所定の単位を取得する
  • 国家試験に合格する

この課程を通過するためには、金銭的なコストと臨床実習を突破するという労力的なコストもかかります。では、これらの課程を終了するまでの金銭的コストはいくらかかるのでしょうか。世の平均を見ていきたいと思います。

理学療法士になるためには下のいずれかの学校を卒業する必要があります。

  • 4年制専門学校
  • 3年制専門学校
  • 国公立大学
  • 私立大学

各学校の1年間の平均的な学費は次のとおりです。

年間の平均学費
年間の平均学費

最安値の”国公立大学”最高値の”私立大学”では年間140万円も差があります。さらに、どの学校へ入学しても入学金や実習費等が加算されることになります。想定されるその他の費用は次のとおりです。

入学金や実習費等
入学金や実習費等

実習費は0万円~80万円と差がありますが、学校付属の病院があるところでは実習費用がかからないところもあるということです。雑費はケーシーやゴニオメーター等の購入費です。また、実習のための居住費や食費、水道・光熱費が+αの経費として発生します。

ちなみに、私が卒業した大学は国立で実習費は30万円強かかりました。

次に、入学から卒業までにかかる学費の平均を見ていきます。

卒業までの学費の平均
卒業までの学費の平均

最安値は国公立大学の293万円最高値は私立大学の953万円でした。同じ理学療法士養成校でも、学校によって660万円の差があることが分かります。社会人のスタートラインにたった時に、卒業した学校によってこれだけの差がでてしまうんですね。

では、理学療法士になることでどのくらいの収入が見込めるのか、平均年収と生涯収入を見ていきましょう。

理学療法士の平均年収

理学療法士の年収は、地域や企業規模により大きく異なる傾向にあります。また、現在の給与水準は理学療法士の養成校が増加する前と比べ減少傾向にあります。私の勤務する総合病院でも、同じ経験年数で比べた時の給与・昇給額は、若手になるほど低くなっています。

では、2021年現在の「年代別の平均年収」はどの程度なのか、下表にまとめたので見ていきましょう。

年代別の平均年収
年代別の平均年収
年収とは?

年収は、(基本給+各種手当)×12ヶ月分+賞与の合計額です。社会保険料などが差し引かれる前の「総支給額」になります。

現在の自分の年収と比較してみてどうでしょうか?私の場合は「平均とほぼ同じ」でした。

この結果から、良くも悪くも「50代になれば平均年収は560万くらいにになるのかぁ。」と思った事でしょう。しかし、単純にそうとは言えません。なぜならば、表の50代の平均年収は養成校が増加する前の給与水準のため、給与・昇給額は現在より高い傾向にあります。したがって、現在20代・30代の理学療法士が50代になった時の平均年収は、この表よりも下がる可能性が高いと言えます。

大卒サラリーマンの平均年収との比較

理学療法士の平均年収がわかったところで、今度は他の職種と比較した時にどの程度の差があるのか見ていきたいと思います。理学療法士として働くには養成校を卒業する必要があるため、比較対象は”大卒のサラリーマン”とします。

では、下表に「理学療法士と大卒サラリーマンの年代別の平均年収」をまとめたので見ていきましょう。

PT・OTと大卒サラリーマンの年代別の平均年収
PT・OTと大卒サラリーマンの年代別の平均年収
【男性】
  • 全年代で大卒サラリーマンよりも年収が低い。
【女性】
  • 20代は大卒サラリーマンよりも年収が低い。
  • 30代・40代・50代では大卒サラリーマンよりも年収が高い。

残念ながら、多くの年代で大卒サラリーマンよりも年収が低いという結果でした。しかしこの結果はあくまで”平均”であり、残業代の有無などさまざまな要因により上下幅があることが予測されます。

ここで気になるのが、30代~50代の女性理学療法士の平均年収が比較的高いということです。ではその理由を見ていきましょう。

女性の平均年収が高い理由

30~50代(とくに40~50代)の女性理学療法士の平均年収が高い背景には次のような事が考えられます。

  1. 女性の理学療法士の絶対数が少なかった
    • 就職希望者数よりも求人数が多かった → 売り手市場であった
  2. 養成校が増加する前の理学療法士の年収自体が高め
    • 取得単位の上限がなく集団でも算定できたため、収益への貢献度が高く給与水準も高かった → 理学療法士が「金の卵」と呼ばれた世代
  3. 一般企業に比べて産後の職場復帰がしやすかった
    • 女性の社会進出があたりまえとなり、出産や育児に対する保障も徐々に充実。→ 働きやすい環境があり、専門職として市場価値が高かった

つまり、30~50代(とくに40~50代)の女性理学療法士が働きはじめた頃は売り手市場で取得単位の上限がなく給与水準が高かったため、平均年収の引き上げにつながったと考えられます。

そのため、理学療法士が買い手市場個別リハとなり、診療報酬の下方修正が進んでいることを考えると、私達が40代・50代となる頃の平均年収はもっと厳しいものになりそうです。

理学療法士の生涯収入

次に、理学療法士が定年(60歳)まで働いたときの生涯年収について見ていきましょう。こちらも平均年収と同様に、地域や企業規模によっておおきく異なる傾向があります。下表が退職金を除く、理学療法士の生涯収入の平均になります。

理学療法士の平均生涯収入
理学療法士の平均生涯収入

金額が大きいため、これを見てもなかなかイメージがつかないと思いますので、高卒・大卒の生涯収入と比較してみましょう。(下表の情報は、”独立行政法人労働政策研究所・研修機構「ユースフル労働統計2020」”を参考にしています。)

高卒・大卒の平均生涯収入
高卒・大卒の平均生涯収入

高卒でも男性の平均生涯収入は2億を超えています。

理学療法士と高卒・大卒の平均生涯収入の比較
理学療法士と高卒・大卒の平均生涯収入の比較

平均生涯収入だけで比較すると、養成校の費用と国家資格取得の努力が報われないように感じてしまします。男性の平均生涯収入においては、高卒と比較しても3400万円も低いという結果でした。国家資格取得に必要な経費をあわせるとその差は家が一軒建つほどです。

業種別・エリア別の平均生涯収入

平均生涯収入の項で触れた高卒・大卒の平均生涯収入は、さまざまな業種を含んでいます。そこで、業種別の平均生涯収入とエリア別の平均生涯収入を参考資料として見ていきます。下表が、業種別の初任給・生涯収入をまとめたものになります。

業種別 初任給・生涯収入
業種別 初任給・生涯収入

医療、福祉の生涯収入が理学療法士の生涯収入よりも高くなっているのは、医師や薬剤師といった高収入の医療職を含むためです。また、高卒の生涯収入が2億円を超えていた理由としては、建築業などの肉体労働系の仕事に就く人が多く、その給与が比較的高い傾向にあることが影響している可能性があります。

次に、エリア別の平均生涯収入をみていきましょう。下表が全ての業種を含む、エリア別の平均生涯収入をまとめたものになります。

エリア別 平均生涯収入
エリア別 平均生涯収入

平均生涯収入が最も高いのが関東圏なのは予想どおりですね。現在私が住んでいる「北海道・東北」は最も平均生涯収入が低いとは残念です。

理学療法士として60歳まで働いた時の「収支シュミレーション」

理学療法士の平均生涯収入「約1億7000万円」を手取り額(可処分所得)にすると「約1億3600万円」になります。この手取り額を基準に、60歳までに必要な支出を差し引いた時、どのくらいのお金が残るのかをシュミレーションした結果を下表にまとめました。

23歳~60歳までの収支シュミレーション
23歳~60歳までの収支シュミレーション

学費については、満額自分で支払う人は少ないと思いますが、奨学金の返済の目安として組み込んでいます。月の生活費は「20万円」を想定し、娯楽費・交際費を含んでいます。「残金」部分が23歳~60歳まで働いた時に”自由に使えるお金”になりますが、このお金で車や住宅の購入・維持費、冠婚葬祭費等も賄うことになります。多いか少ないかはその人のライフスタイルによりますが、”お金のために我慢する必要がない生活水準か?”といわれると”そうではない”と言わざるを得ません。

まとめ

理学療法士は”やりがいがある仕事”と感じている人は多いですが、収入は決して高望みできない職業であることも事実です。また、少ない収入から研修費や協会費を捻出しなくてはならず、支出は一般のサラリーマンに比べて多い傾向があります。

現在は理学療法士を必要とする患者さんや利用者さんが多いものの、業界はすでに飽和状態であり、需要が減少してくるであろう20年後には理学療法士が選別される日がくると思います。

そんな現状の理学療法士を一生の仕事として選択する時、「収入」を求めているのであれば一度考え直してみるのもよいと思います。

以上、15年以上理学療法士を続けている”うしむね”からのメッセージでした。

Presented by うしむね

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