【後方アプローチ編】大腿骨人工骨頭置換術を実施した方の生活に関する注意点

患者さんの部屋

 今回は長期にわたる入院生活ならびにリハビリのほう、大変お疲れ様でした。ご自宅での生活において確認・注意して頂きたい事項についてまとめましたので、ご一読頂ければと思います。

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注意!

 今回解説する脱臼肢位は、手術の方法が「後方アプローチ」のものです。動作方法については基本的な実施方法であり、患者さんの身体状況により最善の実施方法が異なる場合があります。不明・不安な点がある方は担当のリハビリスタッフへ確認してください。

前方アプローチに関する情報はこちら

脱臼のリスク管理について

 今回の手術「人工骨頭置換術(術式:後方アプローチ)」を実施した方は、生活する上で脱臼肢位と呼ばれる股関節の角度に注意する必要があります。

脱臼肢位
  • 股関節屈曲+内転+内旋(太ももを上げる+太ももを閉じる+足の裏を外側に向ける)
  • 股関節を深く曲げる

脱臼リスクを伴う日常生活動作の具体例について

 脱臼肢位を理解していても、日常生活の中で無意識のうちに脱臼肢位をとってしまう方がいらっしゃいます。元気になるにつれて日常生活活動も活発になり、ついつい脱臼肢位をとる機会も増える傾向があるため、慣れた頃にこそ注意が必要です。 

脱臼リスクを伴う日常生活動作の例
  • 手術した方の足をベッドから投げ出す
  • 靴の脱ぎ履きを内股で行う
  • とんび座り(=ぺたんこ座り)
  • 横座り(=お姉さん座り)
  • 内股で立ち上がる(座面が低いほど危険)
  • しゃがむ
  • 和式トイレの使用
  • 手術した方の足を高い段差へかける

 手術した足の状態によっては、靴べら(:靴を脱ぐ/履く)やリーチャー(:床に落ちた物を拾う)、ソックスエイド(:靴下を履く)といった道具を使用すると、脱臼リスクを回避しつつ動作をスムーズに行うことができます。

各動作方法について

またぎ動作

またぎ動作の手順
  1. 杖(または手すり)
  2. 手術をした方の足(:患側の足)
  3. 元気な方の足(:健側の足)

 さらに、3番目に出す”元気な方の足を障害物の近くによせる”ふらつきにくくなります。逆に、3番目に出す元気な方の足が障害物から遠い”ふらつきやすくなります。

階段(段差)の昇り降り

 階段や連続した段差を昇り降りする際は、無理せずに2足1段(1段ずつ足を揃える方法)で行うことをおすすめします。

(身体機能の高い方が1足1段(一般的な昇り降り)で実施する場合は、動作手順は不同です。)

階段を昇る手順
  1. 杖(または手すり)
  2. 元気な方の足(:健側の足)
  3. 手術をした方の足(:患側の足)
階段を降りる手順
  1. 杖(または手すり)
  2. 手術をした方の足(:患側の足)
  3. 元気な方の足(:健側の足)

床に座る/床から立つ

注意!

 人工骨頭置換術を実施した方は、脱臼のリスクや人工股関節への負担を考え、布団よりもベッドの利用をおすすめします。

 今回の動作方法は、あくまで行わざるを得ない場合のための情報であり、床に座る/床から立つ動作を日常生活で推奨するものではありません。

 床に座る時も床から立つ時も、脱臼肢位に注意しながらいったん”四つ這い”になるのがポイントです。

床に座る
  1. テーブルなどの支持物に手をつき、手術した方の足を後ろへ引きます。
  2. 手で支えながら、手術した方の膝をゆっくりと床上へつきます。
  3. 手で支えながら、元気な方の膝をつき膝立ちになります。
  4. 手を片方ずつ床上につき、四つ這いになります。
  5. 手術した方の足を後ろへ伸ばします。(この後手術した方の足はずっと伸ばした状態を維持します。)
  6. 手で支えながら、”元気な方の足側”へお尻を回し床へつきます。
  7. 元気な方の足を伸ばして、長座位(両足を伸ばして座っている姿勢)になります。
床から立つ
  1. 長座位(両足を伸ばして座っている姿勢)から、元気な方の足をあぐらをかくように曲げます。(四つ這い直前まで手術した方の足は伸ばした状態を維持します。)
  2. 手で支えながら、”元気な方の足側”へ回り四つ這いになります。
  3. テーブルなどの支持物まで四つ這いで移動します。
  4. 手を片方ずつ、テーブルなどの支持物へ移動します。
  5. 元気な方の足を立てます。
  6. 手術した方の足のつま先を立てます。
  7. 手で支えながら立ち上がり、手術した方の足を1歩前へ出し、立位となります。

転びにくい生活・環境づくりについて

 これからも元気に楽しく過ごしていくためには、脱臼肢位の管理に加えて”転びにくい環境”で生活することが重要になります。今回骨折してしまった場所をはじめ、以下を参考に生活・環境の見直しをおすすめします。

転びにくい生活環境の一例
  • 床になるべく物をおかない。(整理整頓)
  • カーペットや敷物など、つまづきやすいものを置かない。
  • 電源コード類を歩く動線上に配置しない。
  • トイレや階段、お風呂場などに手すりを設置する。
  • 夜間トイレへ行く際は電気などで明かりを確保する。
  • スリッパやサンダルを避けて、運動靴など滑りにくい履き物を選ぶ。
  • 靴の脱ぎ履きに椅子を使用する。
  • 上がり框など、高い段差へは踏み台を使用する。

 なにか不明・不安な点がありましたら、担当のリハビリスタッフへお声がけください。

 それでは、お大事にしてください。

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