ケア病棟の施設基準の一つである「1日平均2単位以上」についてどのように管理していますか?
地域包括ケア病棟には“リハビリを必要としない患者さん”も入院するため、ケースによって「1日平均2単位以上」という施設基準に該当しない方もいます。そのため、単純に実施単位数を入院患者数で割っても正しい数字を導き出す事はできません。概算で「1日平均2単位以上」を達成できるようなマンパワーがあれば、そこまで正確に単位を把握する必要はないですが、地域包括ケア病棟のリハビリテーション料は包括となるため、そのような人員配置が可能な病院はほとんどないでしょう。
そこで今回は、実際に地域包括ケア病棟の立ち上げ・運営を行った私が作成した「単位管理ツール」と作成過程で悩んだことや経緯・感想について紹介していきたいと思います。
単位管理ツールの全体像
上の図がエクセルで自作した「単位管理ツール」になります。4月から翌年3月までの”年度分”を1つのエクセルファイルとして作成しています。実際に入力する部分は緑色で色別し、管理する職員が異動になっても使用しやすいレイアウトを意識しました。また、計算式が入力されている部分(0が表示されている部分)は上書きや削除されないように”ロック”をかけています。
単位管理ツールの機能
このツールは、入退院患者をリハビリ処方の有無や対象外などのカテゴリ別にしており、各カテゴリに該当するその日の入退院患者数とリハビリの実施単位数を直接入力して使用します。入力されたデータは自動的に計算され、その日の”患者一人あたりの平均単位数”が算出されます。また、入院中に新規リハビリ処方がでた場合やリハビリが終了となった場合もその人数を入力していきます。
単位管理ツールのカレンダー部分は、1つ目のシート(4月)の”年数”を変更するとファイル内の全てのカレンダーの曜日と色が自動で変更されるようになっています。
単位管理ツールの末尾には集計項目があり、現時点(日付と共に自動で更新)での合計・平均が算出されます。
単位管理ツール作成時に悩んだこと
単位管理ツールの作成においてはいくつかの壁にぶち当たりましたが、その中でも特に頭を悩ませたことを3つ紹介します。
- そもそも私にエクセルスキルが無かった
- 「1日平均2単位以上」の分母に加算されるタイミングがそれぞれいつからなのか?
- 部署異動に伴う業務引き継ぎ後、次の管理者が使用できる仕様にするにはどのように作成するべきか?
1つ目の「そもそも私にエクセルスキルが無かった」ですが、当初はエクセルを使ってなんとかしようという考えすらありませんでした。これはおそらく大半の医療従事者に言えることだと思います。それぞれが専門知識を学び業務に従事しているため、解決策をエクセルに向けるのは至難の業です。
単位管理ツールの作成に踏み切った私は、はじめにエクセルでつくる「万年カレンダー」というものを知り、それを作成しながらエクセルの勉強を始めました。その後は「エクセル関数」を徐々に使えるようになり、さまざまな業務効率化ツールを作成できるようになりました。
2つ目の「1日平均2単位以上の分母に加算されるタイミングがそれぞれいつからなのか?」ですが、私一人では判断することが困難だったため当時の長と相談しながら解決しました。結果として、なかなかにややこしい内容でしたので、参考までに下にまとめています。
- 加算
- 当日:転入・転院患者(院外から)
- 例外:リハビリ新規処方(実施希望日)
- 減算
- 当日:転棟(院内から)、算定期限切れ
- 翌日:退院患者、リハビリ終了患者(終了指示日の翌日)
とくに、院外からの入院と院内からの転棟で分母に加算されるタイミングが違う事に混乱したのを今でも覚えています。
3つ目の「部署異動に伴う業務引き継ぎ後、次の管理者が使用できる仕様にするにはどのように作成するべきか?」ですが、この問題の解決策こそがエクセルスキルにありました。
具体的には
- 入力するセルを色別して統一(認識のしやすさ)
- カレンダー部分の変更は”年数”を入力するだけで変更できる仕様に(時間効率)
- 新しい年度分は、ファイルをコピーするだけ使用できるように原本を用意(簡単操作)
- 関数式が入力されたセルのロック(エラーの防止)
とすることで、エクセルが詳しくない職員でもエラーが生じる事なく使い続けることができています。
作成経緯と使用した感想
当時の私は、地域包括ケア病棟の立ち上げを主導で行っていたこともあり、多くの日を20時過ぎまで残業(残業代は一部のみしか支給されず)していました。身も心も疲れた状態で単位管理をするのは非常に苦痛で、計算ミスが発生する事も多々ありました。そんな中、自分を守る方法として休日に作成したのが「単位管理ツール」でした。単位管理ツールを使用してからは残業時間も減少し、計算ミスが発生することもなくなりました。私はこの時はじめて“ITによる業務効率化”を実感し、その可能性を知るきっかけになりました。
この単位管理ツールは、現在も地域包括ケア病棟で使用されており非常に役に立っているとの話をよく耳にします。立ち上げ当初は地獄でしたがうれしいことです!
まとめ
今回は、私がエクセルで作成した「地域包括ケア病棟の単位管理ツール」について紹介しました。身近にあるエクセルを有効利用することで、自動化と正確性の向上を図り、実行できる業務効率化が至るところにあると思います。特に管理職になるほどその効果と恩恵は大きいと実感しています。
今回の記事が、あなたの業務効率化に貢献できれば幸いです。
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