歩行をサポートする杖は、多くの方々にとって重要な歩行補助具です。
しかし、「自分にとって適切な杖はどれなのか?」悩む方も多いのではないでしょうか?
実際に担当した患者さんの中にも、入院前に購入していた杖が体の状態に適切なものではなかったことが少なくありません。
そこで今回は、理学療法士であるサイト管理者が”杖の種類と選び方”についてお伝えしていきます。
杖の目的と役割
杖は筋力低下をはじめ、麻痺や痛みなどさまざまな症状に対して歩行のサポートをしてくれる便利な道具です。
そんな杖の「目的と役割」について確認していきましょう。
- 歩行のバランスをサポートしてくれる。
- 杖を使用することにより、支える面積が広がりバランスがとりやすくなります。
- ふらつきを抑えることにより、転倒リスク(転ぶ可能性)を軽減してくれます。
- 足腰にかかる負担を軽くしてくれる。
- 腰や股関節・膝関節にかかる負担を軽減してくれます。
- 「人工関節」への負担を軽減し、人工関節を長持ちさせる助けになります。
- 段差や障害物がわかる。
- 杖が接触することにより段差や障害物を把握することができます。
- 安心感を与えてくれる。
- ふらつきや転倒リスクが軽減することによる安心感から、歩行や外出への意欲が高まります。
杖の種類
次に杖の種類について確認していきましょう。
杖にはさまざまな種類がありますが、それぞれに特徴や適性があります。
以下に代表的な杖の種類を紹介します。
1本杖(T字杖)
特徴
- 最も一般的な杖で扱いやすい。
- 折たたみ式もあり。
- 軽量で持ち運びしやすい。
- デザインや色、素材など種類が多い。
- 値段は安い物から高い物まである。
- 介護保険は利用できない。
適している人
- 歩行に少しだけサポートが必要な人。(杖なしでも歩ける人、または杖を軽く持つ程度で歩ける人向け)
- 杖にかける荷重は体重の15-20%程度。
多点杖(3点、4点)
特徴
- 3点または4点の接地面を持つため安定性がよい。
- 1本杖より体重を多く支えられる。
- 介護保険が利用できる。
4点杖(クアドケイン)ワイドベース
特徴
- 4つの接地面があり、非常に安定している。
- 平地では安定性が高い。
- 介護保険が利用できる。
- 1本杖に比べて重量があり、持ち運びしにくい。
- 屋外などの不整地ではふらつきやすい。
適している人
- 杖に体重を多くかける必要がある人。
- 安定性が重要な人。
- バランスに不安がある人
ロフストランドクラッチ
特徴
- 腕で支えるため手や手首の負担が少ない。
- 長時間の歩行に適している。
- 介護保険が利用できる。
適している人
- 持ち手だけの杖を使えない人。
- 腕の力や握力が弱い人。
- 手首に負担をかけたくない人。
松葉杖
特徴
- 足にかかる負担をより多く軽減させる事ができる。
- 介護保険はレンタルのみ利用可能。
- 使い方を間違うと、手の痺れなど神経症状が出現する可能性があるので注意が必要。
適している人
- 足にほとんど体重をかけられない人
- 骨折などにより体重をかけてはいけない人。
杖の選び方
杖は体の状態にあったものを選ばないとその効果を十分に得られず、逆に転倒リスクを上げてしまうこともあります。
そのため、適切な杖を選ぶ事は歩行の安定性と転倒予防の観点から非常に重要であると言えます。
まずは体と歩行状態から、「あなたに適切な杖の種類を確認」してみましょう。
つづいて、実際に使用する「杖を選ぶ際のポイント」について確認していきましょう。
杖を選ぶ際のポイント
- 杖の長さ
- 自分の身長に合わせて適切な長さを選びましょう。
- 「身長÷2+3」で適切な長さの目安を計算することができます。
- 持ち手の太さ
- 手にフィット(持ったときに快適な感じが)する太さを選びましょう。
- 持ち手には「T字」や「L字」などの形状があります。
- 持ち手の素材には「木製」「ゴム製」「アクリル製」「樹脂製」などがあります。
- 杖の重さ
- 自分の体力や手の力、使用目的にあわせて選びましょう。
- 杖の棒の部分が太い方が頑丈ですが、その分重くなる傾向にあります。
- 長時間使用する場合は、重すぎないものを使用しましょう。
- 杖の素材(棒の部分)
- 耐久性や快適さを考慮して選びましょう。
- 「木製」「アルミニウム製」「カーボン製」などの素材があります。
※ 「太さ/頑丈さ」と「軽さ」の両立を追求すると価格が高くなる傾向があります。
まとめ
いかがでしたか?あなたに適切な杖は見つかりましたか?
杖を選ぶ際には、自分の体の状態や生活スタイルに合ったものを選ぶことが大切です。適切な杖を使用することで、歩行の安定性が向上し日常生活がより快適になります。
不安や不明な点がある時は、理学療法士などの専門家に相談しましょう。笑顔でやさしく教えてくれますよ!
コメント