
このまえ、後輩から「家族がインフルエンザになって、自己負担での予防投与を指示されて、14,000円もかかった」という話があったよ。

14,000円!?
けっこうかかるのね。

予防投与は医療保険適用外だから、全額自己負担なんだよ。

感染対策とはいえ、職場の都合で全額自己負担の強制は納得できない部分があるわね。

そうだね。
”ゆー”の言う通り、後輩も不満をもらしていたね。

そもそもさ、それって法律的にどうなのよ?
職場の都合で、職員に全額自己負担を強制させることは問題ないの??

そう来ると思って、すでにリサーチしておいたよ!

後輩くんのためにも、わかりやすくまとめてよね!

了解!
では「家族が感染症にかかった際の予防投与の負担」について解説していくよ。
みなさんの職場では、家族がインフルエンザなどの感染症に罹患した場合の予防投与について、どのような対応になっていますか?
- 自己負担ですか?
- 職場の負担ですか?
インフルエンザの予防投与については、
- 就業規則や感染対策マニュアルにどのように記載されているか?
- どのように指示を出されるか?
によって、法的・倫理的に問題がある可能性があります。特に「強制」や「不利益な扱い」が伴う場合は注意が必要です。
今回は、「インフルエンザの予防投与の費用負担は誰がするべきか?」に焦点をあてて、リサーチした情報をまとめていきたいと思います。
- 医療機関で働く職員(看護師・療法士・事務職など)
- 感染対策に疑問を持っている人
- 法的根拠をもとに職場対応を見直したい人
インフルエンザ予防投与の法的位置づけ
インフルエンザ治療薬(例:タミフル、イナビル)の予防投与は、感染者との濃厚接触があった場合に限り、医師の判断で行われることがありますが、これは保険適用外であり、原則として自己負担です。
医療機関によっては、感染拡大防止の観点から、職員が家族から感染するリスクが高い場合、予防投与を推奨することがあります。
ただし、これはあくまで「任意」であり、強制ではありません。
予防投与を強制することはできるのか?
保険適用外となる高額な費用負担を伴う予防投与ですが、職場側から強制することはできるのでしょうか?
強制的な自己負担は労働法上問題となる可能性(業務命令に伴う費用は原則、事業者負担)
感染対策などで、業務上の安全確保のために予防投与を求める場合、費用を職員に負担させることは「業務に必要な費用を労働者に負担させる」ことになり、労働基準法第89条や第91条に抵触する可能性があります。
労働基準法第89条・第91条(就業規則と制裁)
- 就業規則に基づいて職員に義務を課す場合、それに伴う費用を労働者に負担させると、不利益取扱いに該当する可能性があります。
- 特に「義務」として明記されている場合、業務命令に準じる扱いとなり、費用負担は原則として事業者側にあるべきです。
📚 参考資料
- 第89条(就業規則の作成・届出義務)
- 厚生労働省 長野労働局「労働条件ハンドブック」PDF
労働基準法第89条の概要と記載事項 - マネーフォワード社の解説記事
労働基準法第89条とは?就業規則の作成ルールをわかりやすく解説 - 労働新聞社「労働法検索」条文集
労働基準法 第89条~第93条(第9章 就業規則)
- 厚生労働省 長野労働局「労働条件ハンドブック」PDF
- 第91条(制裁規定の制限)
- 労働新聞社による条文掲載ページ(第91条含む)
労働基準法 第89条~第93条|労働法検索 - Wikibooksによる逐条解説
労働基準法第89条 – Wikibooks
- 労働新聞社による条文掲載ページ(第91条含む)
職員の健康管理は事業者の責任
労働安全衛生法では、事業者(病院)は職員の健康を守る義務があります。
感染予防のための措置を講じる場合、費用負担を職員に求めるのは合理性を欠くと判断される可能性があります。
労働安全衛生法(第3条・第22条など)
- 事業者は労働者の安全と健康を確保する義務があります。
- 感染症予防のための措置(予防投与を含む)を義務化するならば、それは事業者の責任に基づく措置であり、費用も事業者が負担すべきです。
📚 参考資料
- 第3条(事業者等の責務)
- 条文全文(厚生労働省PDF)
労働安全衛生法(第1章 総則) - 逐条解説(Wikibooks)
労働安全衛生法第3条の解説
- 条文全文(厚生労働省PDF)
- 第22条(健康障害の防止措置)
- 条文と逐条解説(厚労科研報告書)
労働安全衛生法第22条~25条の逐条解説(PDF)
→ 病原体による健康障害を防止するために、事業者が必要な措置を講じる義務があるとされています。 - 条文一覧(労働新聞社)
労働安全衛生法 第20条~第36条
→ 第22条では、病原体などによる健康障害を防止するための措置が明記されています。
- 条文と逐条解説(厚労科研報告書)
「指示」か「推奨」かで意味が変わる
「自己負担での予防投与を指示」された場合、実質的に強制であれば、職員の自由を侵害している可能性があります。
逆に「任意で希望者に対して予防投与を案内している」のであれば、違法性は低いと解釈できます。
医療機関の感染対策は業務上の必要性
- 医療機関では、職員が感染源となることを防ぐための予防措置は業務上の必要性に基づいています。
- そのため、予防投与が義務であれば、業務に必要な費用(業務関連経費)として病院が負担するのが合理的です。
どう対応すべきか?
- 病院の感染対策マニュアルや就業規則を確認
予防投与の方針がどのように定められているか、文書で確認することが重要です。
「義務」とされているか、「推奨」や「任意」とされているかで、費用負担の根拠が変わります。 - 労働組合や社労士に相談するのも有効
職員が不利益を被る(強制的な自己負担がある)場合、労働者の権利として異議申し立てが有効です。
病院側が費用を負担しない場合、労働基準監督署への相談も選択肢になります。
特に「義務」として強制されている場合は、行政指導の対象となる可能性があります。 - 医師の診察なしでの処方は医師法違反
万が一、診察なしで予防投与として職場の病院から薬を渡された場合、医師法に違反している可能性があります。
予防投与であっても、診察なしで薬を渡すことは医師法に抵触します。
まとめ
今回は、インフルエンザの予防投与の費用負担について、法的根拠を添えてまとめました。
「職場の指示=合法」とは限りません。制度や法令を知ることで、不当な負担を回避できる可能性があります。
みなさんも職場の就業規則や感染対策マニュアルに目を通し、本来費用を負担するべき対象は誰なのか、今一度確認してみてはいかがでしょうか。



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